俺が踵を返して歩いてくと、後ろを着いてくる愛理。


束縛強い子ってほんとに嫌いなんだよな。


「どこ行くの?」

「部室」

「……橙磨……。最近、愛理のこと避けてるでしょ?」

「は?」

「気付いてよ………。好きなの橙磨のこと……優しくしてくれる橙磨が大好きなのっ……っ」


ポロポロと涙を流して顔を両手で隠す。


うわ………この感じ俺が泣かしたみたいになってんじゃん!


焦った俺は、とりあえず愛理を抱きしめた。


「分かったから泣くなよ~……」

「好き~……橙磨のこと好き」

「はいはい。泣き止んだら家帰れよ」

「うんっ」



俺はバカだった。


部室に行く途中の廊下だから、いつ誰が来てもおかしくない。


愛理を抱きしめる俺と目が合ったのは、重たそうな資料を抱える結香だった。


俺も俺で反射的に愛理から腕を離した。


「……橙磨?」

「部活……行くわ。またなっ」



部室じゃなくて体育館へ走った。