【結香side】



「はぁ~………」

「どうしたの?朝から溜め息なんてついて」

「いや……そのっ、橙磨に合わせる顔ないなって思うんです…」


心配そうにあたしの背中をポンポンと優しく叩いてくれた静乃さん。


あぁ………ほんとに女神!!


「佐倉は何も怒ってないわ。だって、自らの意思で結香を逃がしたんだもの」

「そう、ですかね…?」

「うん。今日私からもガツンと宮田に言っとくわ」


荷物を持ち上げふっと笑って、先に部屋を出た静乃さんの後ろをあたしも追う。



─────そう、始まりは昨日のアイスを買った帰り。


自由時間を過ぎても、合宿所の外にバスケ部の笑い声が響いてたから油断してた。


橙磨がガラガラ……とドアを開けると仁王立ちの宮田さんがいて………。


「お前ら~自由時間過ぎてんのに、どこでイチャイチャしてたぁ?」

「すっ、すいませんでしたっ!」


咄嗟に謝ったあたしの前に橙磨が立って、ペコッと頭を下げた。


「すいません龍太さん。俺のわがままでコイツ連れ回しました。全部俺の責任なので、結香は見逃してくれませんか?」

「はぁ~………姫川!部屋戻れ!」

「えっ……で、でも…!」

「いーから!早く戻れって」


「失礼します」とだけ言い残して一人だけ部屋に戻った。