無言の帰り道。


そりゃそうだ。


ケンカしてる状態で、二人きりで帰るし。


バスの中でも無言。


お互いスマホをいじって顔すら合わせないようにしてる。


バスを降りてからやっと結香に話し掛けた。



「メロンパン……食べる?」

「……食べたい」


たった一言。


このたった一言で一安心して、小さな商店からメロンパンを二つ買った。


「ありがとう……」

「どういたしまして!……結香」

「ん?」

「ごめん。この前は……ごめんね」

「……別にもういいよ。気にしてないし。あたしこそ強く言い過ぎたから。ごめんね」


ふわりと笑ってから、メロンパンを一口頬張った。


あ……多分許してくれた。


俺もメロンパンを食べれば甘い匂いが広がる。



「おいしい……最近は橙磨に奢ってもらってばっかだね!」

「ほんとだよ!今度、メロンパン奢れよな~」

「気が向いたらねっ」


得意気に笑った顔を見てると、ケンカした時のことなんて忘れた。


仲直りの鍵は身近なメロンパン。