それからの1ヶ月は遅かった。
裏庭にも、学校にも雛深先輩は来なくなったし、
抹陽も保健室登校になってしまった。
「やっと、いつもの日常に戻れたんだ。」
俺の日常。望んだ日常。
それなのに、何故か、心に穴が空いたようだった。
雛深先輩がいるときは馬鹿みたいに早く終わる昼休みも、
抹陽がいるときはすぐ終わる先生の長い無駄話も、
いつもよりうんと長かった。
つまらないので、授業に出なくなった。
また、前の日常が戻ってきただけなのに。
正直、寂しかった。
雛深先輩へ送ったメールも、
抹陽へ送ったメールも、
返信はない。もともとその二人しかケータイにアドレスは入ってないので、
俺のケータイに着信が来ることはなくなった。
俺はケータイの電源を切った。
卒業式前になって、抹陽が転校したと知らせが入った。
そりゃーな、と思った。
しかし、雛深先輩は卒業式にも来なかった。

卒業式が終わって。俺は、中庭でねころがった。

涙がこぼれた。
あいつらが、雛深先輩がいない日常が、こんなに寂しいなんて。
会いたい。

その瞬間、気付いた。
俺は、あの日から。
しましまパンツが舞い降りた日から。
雛深先輩に綺麗と言われた日から。
雛深先輩と笑いあった日から。

俺は、雛深先輩に、恋をしていたんだ。

その瞬間、ありえないスピードで駆け出した。
雛深先輩の家へ向かって。