後ろから風が追いかけてきたとき
イヤホンを外したはずなのに、ボーカルの声が聞こえてきたような気がした。
あの大好きな、爽やかなギターの音と一緒に。
そして、走った。
疾走感のあるメロディに押されて。
理由とか、そういうものはとりあえずどうでもいい。
細かいことは放っておこう。
君の驚いた顔が見たい。
暑いねといって笑いたい。
勉強とか、進路とか、将来の夢とか、君のものなら考えていたい。
補習がんばれ、と言いたい。
できれば、その影の近くを歩いていたい。
なんといっても、これが最後の夏だから。
この長い長い一本道をいくのも、最後だから。
【影】