「悪い、誰か、チャリ貸して」


黄色に染まった手をぶらぶらさせながら、あいつが久しぶりに声を発した。


「ペンキきれたから、買ってくるわ」


あいつじゃないみたい。自ら買い出しに行くなんて。去年はたしか、自分の飲み物を人に買いに行かせてたのに。


なんだかよくわからないけど、嬉しくて、スカートのポケットに手を突っ込んで急いで鍵を探した。


放り投げたそれを綺麗にキャッチして


「サンキュ」



白い歯で笑った。