「王国にかけられた呪いは強力だ。王と王妃、それから兄二人がやられた。王都にも原因不明の疫病が広まっている。先月の末には、末の妹が呪いで死んだ。異常がないのは俺だけだ。国を救うため、解呪師に呪いを解いてほしい。頼む」



ルギウスは頭を下げた。


リーと呼ばれた男は一瞬声をかけようとしたが、やがて王子に倣って頭を下げた。リーにつられるように、他の三人も頭を下げる。



「ははっ。人間が頭を下げるっつーのもいい景色だな」

「うるさいぞ」



獣がけけっと笑うと、ぴしゃりと鋭い声が落ちた。


ルギウスはフードの奥の顔を見上げた。

フードの中の顔はよく見えないが、ぎりぎり口元だけが見える。引き結ばれた唇はまだ動かない。


思案しているのか、言葉をかけるのも億劫なのか。



「お前諦めたほうがいいぞ。たとえ受けても数ヶ月待ちだからな」
「は?」



ルギウスは逆さづりの獣を見る。

獣は逆さの姿勢だが、楽しそうに笑っている。



「今解呪師は大盛況だからな。あちこちに引っ張りだこで、新たな依頼受ける余裕なんてねーっつの。な、カーズ」


「うるさいぞ、獣」



フードから伸びた手が大きく上下に揺れる。



獣はけぇ~~~と悲鳴を上げながら、上下に揺れた。



「帰れ。今なら無傷で帰してやる」