(何かいるのか?)



男は慎重に足を進める。


するとまた耳元で「行くと後悔するぞ」と声がする。



思わず耳元に手を当てると、何かがかすめる感触がした。確かに感触がしたのは右手だ。


右手の方に目を向けると、黒い塊が一閃を描いて森の中に消えていくのがわかった。



(森に誰かいる)



男は腰に下げている剣を鞘から抜き放つ。



「殿下?」



茶髪の男が急に剣を抜いたのに驚いて、小屋の中から男に声をかける。

男は目だけ小屋の方に向けると、森の方に向かって剣を構えた。



「どこに向かって剣向けてるんだよ、ばーか。こっちだぞ」



また耳元で声がして、男は背後を振り向いて剣を構える。


しかし、剣を向けた先にいたのは連れの四人だけだった。



「で、殿下!?急にどうされました!?」



驚いて仰け反りながら一人がきくと、男は舌打ちしてまた森へと目を向けた。