「解呪師殿。よく来てくださいました。どうかこの国をお救い下さい」



髭面の男が首を垂れる。


貴族然としたこの男を、ルギウス王子は宰相と呼んだ。

王と兄王子は呪にかかったと森で言っていたから、不在中の国を支えていたのはこの宰相だ。先ほど将軍も呪にやられたという話だから、その負担は相当だろう。




宰相の横から、大柄の男が口を開く。



「私からもお願いします、解呪師殿。我々騎士団も、被害者で溢れ返りそうになっております。どうにか哀れな我らをお救い下さい」



騎士服を着ているこの男は、騎士団の上層部――副騎士団長とのことだ。将軍閣下にかわって、騎士団をまとめているとのこと。



切実に告げられた言葉を表面上は真摯に受け止めつつ、カーズはどうにもたまらない気持ちを抱えていた。


いや、それ自体はいつものことなのだ。



いつもいつも、呪に向かう前には思い知らされること。








人の業は、おそろしく深い。
不快なほどに。