フードの中から向けられた言葉に、ルギウスたちははっとする。



「貴様。よもや殿下に傷を負わすつもりか」


「下賤の身で!斬り伏せるぞ」
「やめろっ」



今にも剣を抜きそうな男たちをルギウスは制す。不服そうではあるがなんとか剣を抜くのをおさえた男たちを確認し、ルギウスは再びフードの頭に目を向ける。



「解呪は難しいか?」


「…」


「どうにか、お願いできないか?」


「無理言うなよ、人間。カーズはさっきやっとこさ面倒な木の魔女の呪いを解いて、帰ってきたところだ。この後にもわんさか依頼人が待って「木の魔女だと?」



反応したのは茶髪のリーだ。



木の魔女、という名前は世界的にも有名な魔女の名の一つ。

世界が誇る魔女は多数あれど、その名を世界に知られている魔女は、七人――七魔女。彼らは特性に応じて通称がつけられ、水の魔女、火の魔女、風の魔女、地の魔女――等々呼ばれる。そして木の魔女。彼女は植物をはじめ、薬草知識に通ずる高名な魔女。



魔女とは、人知の及ばぬ不思議な術を心得る者たちの総称。呪い師も勿論、大枠としてその内に含まれる。

木の魔女は別名、呪いの魔女とも言われる。現呪いの最高峰たる木の魔女の呪いをといたというのは、最も優れた解呪師といっても過言ではない。



「そうさ。とはいっても大分昔の呪いだったから、大して威力はないけどな。だが、呪というものを侮っちゃいけねぇぜ。人の思念たる呪は、時がたつと変化するんだ。人と人が接して心が揺れるように。変質した呪ってのは、放置した病がやばくなるのと同じように取り返しのつかないオゾマシイ状態に「いい加減にしろ」



フード頭が獣を左右に揺らす。獣は奇声を上げて苦しむ。


獣が静かになると、フード頭が静かに喋りだす。