「なるほど、そういうことか。玲緒からその話を聞いた時、変だと思っていたけど」

奈津は、掴んでいた大形さんの手を離した。

「原因は、俺ではなくお前らだったわけだ」

奈津は、怒っている姿を見るの初めてだった。

「な、奈津様、誤解です!私は、ただ莎々原さんの髪にゴミが付いていたから、取ってあげようとしてーー」

「ただゴミを取るだけなのに、何でそんなに力込めんの?」

「そ、それは……」

大形さんは、気まずそうに奈津から視線を逸した。

「望美の頬赤くなってるし、唇からも血が出てる」

「え?」

自分の唇を触ってみると、奈津の言った通り少しだけ血が唇の端から出ていた。