だから、ついそんなことを言ってしまった。

昔の癖か、強がっていたあの時期のせいで、今の流れに行ってしまう。

これは、私にも止めることは出来ない。

「なら、今度は目が開けられないようにしましょうか」

大形さんは、左拳に力を入れて私の右目向かって殴りかかった。

でも、避けようとはしなかった。

どんなに傷が増えても、全部同じだったから。

傷が一つ増えたところで、誰も悲しまない。

そう思い目を閉じた時、もう伝わっていいはずの痛みが来なかった。

「……あれ?」

目を開けた時、見覚えのある後ろ姿があった。

「な、んで?」

「奈津様!」

奈津は、私に向かって来ていた左拳を掴みながら、大形さんを鋭く睨みつけていた。