【奈津】

いつも通り、ランニングを終えてサッカーボールを蹴る練習をしようとした時、莎々原の姿を見つけた。

こんな朝早く何をしているのか気になった俺は、莎々原に声をかけようとした。

でも、その時に莎々原の悲しげが目に飛び込んできた。

「莎々原……」

何て声を掛けたら良いのか分からなかったけど、気がついたら声をかけていた。

そして、莎々原から両親の話を聞いている時、莎々原の体は震えていた。

でも、その震えは別のことでも震えているように思えた。

正直それが何だったのか気になったけど、聞かないことにした。

無理に聞こうとしたら、莎々原を苦しめてしまうと思ったからだ。

だから俺は、莎々原の力になりたいと思った。

莎々原を守ってやりたいと思った。

「なあ、莎々原」

「なに?」

「今日の朝、一緒に学校行かないか?」

「……はい?」