確かに、家の表札を見たら誰でも疑問に思うよね。

『莎々原』って名字なのに、何で『花崎』という表札がかかっている家に住んでいるのか。

「無理に話さなくて良いよ。ちょっと気になったってだけだから」

「……」

小早川君になら、話して良いかもしれない。

私のことを。

「小早川君、聞いてくれる?私が花崎から莎々原に変わったこと」

小早川君の方へと目を向けて、私はそう決意した。

そんな私の顔を見た小早川君は、数秒間をおいてから頷いてくれた。

「……私ね、小学校に上がる前にこの町から引っ越したんだ」

「莎々原って、この町で生まれたのか?」

「うん、そうだよ。小学校に入るまでは、この公園でよく晶と沙弥佳たちと遊んでいたの。引っ越したのは親の仕事の都合でね」

その時、私の体は少しだけ震え始めていた。

「私の両親ね……、交通事故で亡くなったんだ」