聴いたことのない声。


邪魔だとばかりに腕を引かれる。



その時に見えた、黒髪。




下を向いていた目線を上にあげる。





「お、やっと顔あげた。綺麗な顔してるんやから、下向いたったらあかんで」

「なっ…」

「おーーちょい待ち、電話や」




片方であたしの腕を掴み、もう片方の手で携帯を耳にあてる。



黒髪に、襟足に赤いメッシュをいれているこの男。



「ようやく見つけたでー!今からそっち戻るわ」




電話を終え、クルッとあたしの方へ振り向くと、笑顔を向けられた。



な、なに。




「よぉ、こっちまで逃げて来れたな。歓迎するで、新巻 美園ちゃん」

「なんで、あたしの名前っ…」

「知ってんで。あんたのことなら、なんでも」