「アキちゃん」

「へ……あ、は、はい…!」

いきなりミチルさんに名前を呼ばれて、つい変な声がもれてしまった。


「いま、私たちがどこに向かってるか教えてあげようか?」

「ミチル」と力なくリョウさんがミチルさんの名前を呼ぶけど、ミチルさんはそれをバックミラー越しの鋭いひと睨みで一掃する。


「ある料亭に向かってるんだけどね、」

リョウさんはあきらめたように体をシートにもたれた。


「そこではお見合いが行われてるのよ、

ここらじゃ有名な会社のお嬢様と、相手は市議だか県議だかの息子のね。」