「そんな驚くことー?
まあ、もう三年は会話すらしてないから誰も知らないだろうけど」
「え、三年?いったいどうして」
「てゆか、高橋さんヒロちゃんに取り入る気ー?
木野くんと二股なんてやるねー高橋さん」
「ち、違うけどっ
…マヒロくんは、その、二重人格か何かなのかと思って」
「にじゅうじ、え、何言ってるの高橋さん、
ヒロちゃんはいたってふしだらなただのクズだよ?」
「そうなの?……そうなの!?」
とりあえず
お馴染みである七瀬さんの言葉によると
七瀬さんはあまりマヒロくんにいい印象がないだろうことは何とはなしに想像できた。
「そうだよー
色んな女の子手にかけてもてあそんで、だけどあんまりしつこい女の子は突き放すの
ほんと、大嫌い」
「幼なじみなのに?」
「あんな人、もう知らないし、誰?て感じ。
昔はあんなんじゃなかった」
「……昔は、どんな人だったの?」
慎重に聞き出そうとすると
七瀬さんは切なげに笑った。
悲しそうだった。
「そんなに、聞きたい?」
「うん」
「別に、大したことじゃないんだよ。
ううん、ヒロちゃんにとったら大したことなんだろうけど、いや、知らんけど
聞く?」
「うん」
七瀬さんは私をじっと見つめて、頷いた。
夕方がそこまで近づいているような空だった。
七瀬さんは携帯を取り出すと
私に写真を見せてくれた。
「ヒロちゃんの中学時代、と、その彼女。
彼女は高校生」
恐らく隠し撮りされただろうその写真には
二人が仲睦まじく笑いあっている姿があった。
マヒロくんの髪は黒くて今よりも短い
ピアスもしていない。
初々しさが感じられた