そう言いながら頭を小突かれた。
最近、キノはなんだか余裕だ。


いいんだけどさ


キノの居場所は私の隣だって言ってくれた。

私はそれが死ぬほど嬉しかった

もう、涙ちょちょぎれそうだった。


なんでキノは私の隣に居てくれるんだろう

それってたまたま席が隣だったからじゃないの。


私、面白くもなんともないし

キノの大好きなカエルとか虫とかだって
絶対触れないし

見たくもないし


今では近くにキノがいることが普通になってしまっているけど


もし、

キノの隣の席が私じゃなかったら

七瀬さんとか
他の女の子だったら


その人を好きになっていたんじゃないの。



…考えるのやめとこ



今だけ信じてればいい

今あるのはキノが近くにいる事実だけだ。

もし、なんて考えたらきりがない。


「あっっ!!!」


キノがいきなり声をあげると私の肩をひきはがした。

な、なにごと!?



「オニヤンマだっっ!!!」


キノはきらっきらした笑顔で廊下に飛び出すと
そのまま走っていってしまった。


ぽつんと取り残された私。

なんか

色々考えていたのがめちゃくちゃアホらしくなってきた。


廊下をのぞくと

キノは廊下を飛ぶオニヤンマを全力で追いかけていた。


肩が落ちる。

私って
結局虫以下なのか。



呆れながらも

そんなキノを眺めながら笑っている私がいることに気がついた。