「…ん」


足を一歩引き下げると

キノの足が一歩踏み出して、さっきよりもずっと力強く私を引き寄せた。


目を開いたときには二度目のキスがふりかかった。


頭が回らなくてまるで催眠にかかったように頭のなかがとろんとしてる。


暑い

暑いよ、キノ


キノの力が緩み
私はキノの腕から解放された。


どんな顔をすればいいのかもわからず床を見つめる。

付き合って初めてのキスがこんな場所のこんなときだとは思いもしなかった。



「………だって」


え、いきなり言い訳ですか?

こういうことしたあとってどんな話すればいいんだっけ。

わからん



「タカが……わ、笑ったから」


「え?…私笑ってた?」


「笑った顔、めちゃめちゃ可愛くて、なんか、キュンキュンきて


だから

これは不可抗力です」


「………他に言うことないの?」



キノは気まずそうに頬をかきながら私の様子をちらちらと伺う。


キノの考えてることは相変わらずよくわからない


てか、なんでそんなびびってるの?

私別に怒ってないんだけど



「………夏休み始まる前に
キスはそういう雰囲気のときって言われたから


よく分かんないけど

タカが笑ったとき

すげーキスしたくなったから、今だなって思って」


「他には?」


「ほ、他?えーと、えーと」


雰囲気壊すなよ!



「だから、言い訳はもういいから

………なんか気の聞いたこと言いなさいって!!」


「横暴だ!」


「キスしといてしたあとの始末もちゃんとしてよ」


「し、始末って、えっと」

キノがひらめいたように目を開いた。

横暴って…

確かにそうかもしれないけど


やり逃げなんてムード台無しじゃん。