それから、月日がたったというのに、
どうして、今もなお俺は思い出すんだろう。
高橋冬という存在を。
俺は、自分勝手なせいで、彼女をとても傷つけた。
安易な気持ちで、近づくんじゃなかった。
気がついたときには、もう遅かった。
その時間があまりに幸せで、
彼女を愛しいと思うたびに、自分がいやになりそうだったけれど、
どうしようもなく、側に居るのが心地よかった。
分かっている。
俺は、高橋冬が好きだった。
純粋に、好きだった。
触れたいと思った気持ちも、
キスをしたのも、
その先を望んだのも、
全部、嘘じゃなかった。
彼女自身が好きで堪らなかった。
それでも、もうひとつの想いが、俺を引き留めた。
ダメだ、と、自分に言い聞かせた。
もう、彼女を随分と傷つけてきた。
これ以上、気持ちを混同させられなかった。
タカラを永遠に大切に思い続けたい自分を、
高橋冬を好きになってしまった自分が押し潰してしまいそうで、
俺は、もうこのままで居られなくなった。
それに、この先、どうしたって、もっと彼女を傷つけるのは目に見えていた。
俺のなかでタカラが生きている限り、
俺は永遠に彼女を傷つけなければいけなかった。
それだけは、
したくなかった。