いま思えば、彼女は見た目以外はまったくタカラに似ていなかった。

流行にはまったく興味がないし、虫が大嫌いで、料理も運動も苦手、人と接するのがとてつもなく苦手で、

それでも、惹かれた。


おかしなものだと思う。


だから、やっぱり見た目だけで代わりにしてるのだと思った。



代わりに思うことで、落ち着いた。

だけど、すぐに思い知った。自分が最低なことをしているのだと。


今度こそタカラを幸せにしなくてはと思っていた。
何があっても、守ろうとした。

それが出来なかったときは、死のうとまで思った。


けれど、

俺は、そんなことで、見ず知らずの他人を愛し続けていたのかと思えば、

とても変な気分になった。


彼女を幸せにしても、

タカラは死んだ。

タカラは幸せになれなかった。

そして、俺は、そもそもタカラを幸せにする資格なんてなかった。



全部全部妄想だった。



俺は、タカラの特別ではなかったから、
いくら今タカラを思ったところで、虚しかった。



代わりなんて居なかった。


タカラは死んだ。



それを認識してから、
俺は、きっと誰も幸せに出来ないんだろうと思った。

どんなに、今の彼女を好きになったとして、


自分の気持ちに自信がないし、


思い続ける自分も虚しかった。




だから、

やっぱりタカラは死んだから、



俺のなかで生き続けるタカラだけを大切にしないといけないと思った。



そのとき、今の彼女を断ち切らなくてはいけないと思った。