最初、タカラが居る。そう思った。
横顔も似ていた。
なんとなく、仕草も似ていた。
だから、いつからか観察し始めた。
人と会話するのが苦手らしく、友達と言える人も居ないらしい。
だからか分からないけど、一生懸命俺に話しかけてくれた。
ちょっと素っ気なくすると、すごく落ち込んでいた。
そのときは申し訳なく思った。
だから、その次に話しかけられたときは、笑ってみた。
そしたら、その子もすごく嬉しそうに笑ってくれたから、それから、彼女と話すときは笑っていようと思った。
タカ、そう呼んだら、彼女は普通に反応したから、それからはずっとそう呼んだ。
タカラが生きている気がした。
だから、惹かれた。
けど、本当にそれだけだったのかな。
似ているだけで、俺は、あそこまで、
まったくの別人を大切にできたろうか。
何の恩も感じていない他人に、
あそこまで、愛を口にできたろうか。
不思議なことに、
彼女と話すたびに愛しさが込み上げていた。
もう少し、近づいてみたいと思った。
触れてみたいと思った。
それ以上のなにかを望んでいた。
好きだと言った。
大雨の日だった。
彼女は目を見開いて声を失った。
目をうろうろさせて、うつむいて、
それから、ちらっと俺を見た顔は真っ赤で、
そのあと、小さく頷いた。
彼女と、付き合い始めた。