「俺ね、結構怒ってるからね」


四時間目終了時に机に伏したまま顔をあげてしかめつらをしてるキノ。


「俺ばっかり恥かいてさ
俺なんも悪いことしてないのにさ」


「朝から人の膝に何か書いたの誰よ」


「だって、隠れてんじゃん!じゃあ膝だしてよ!」


「やだよ、恥ずかしいもん」


「タカもう嫌いだー」



すごすごとまた顔を机に伏してため息をつく。



「キノ、お昼ご飯は」


「忘れてきた」


「購買で買わないの?」


「今金欠だから」


「私のパン一個あげよっか?」


「え………いや、…いらないし、全然いらないし、別に腹減ってねーし」


言葉に反してぎゅるるると鳴いてますよ。お腹が。

キノは拗ねると結構めんどい。


私が腕くみしてどうしようかと考えていると

教室のドアが開いた。



「キノ、お前また弁当忘れただろ!真さんにまた持たされたぞ」


キノが顔を上げて私もそちらを見ると
クラスの女の子達がこぞってそっちを見た。



「マヒロ!」


長谷川麻広くんこと
見た目派手で美形なキノの幼なじみ。

マヒロくんは家がキノと近いからキノの忘れたお弁当をたまに持ってきてくれたりする。

クラスは確か理系だったから2組


「お前は何回忘れたら気い済むんだ」


「わりーわりー、いやーありがとう愛してる」


そういってマヒロくんにハグするとマヒロくんはかなり嫌そうに反抗した。


「ちょっと、高橋さん、こいつちゃんとしつけてよ」

「そうだちょっとー、聞いてよマヒロ!
見てこのいじめを!」


「はあ?なんだもっともなことじゃねーか」


ガーンと明らかに衝撃を受けるキノを自分から引き剥がすとマヒロくんは私を見て笑った。


「高橋さんも案外やるよね」


「私が先にやられたの」


膝をむき出しにして見せるとマヒロくんが鼻で笑った。


「キノお前あんまふざけてると高橋さんに愛想つかされるぞ」


「別にーもういいしー、いーよ、どーせ俺はバカのゴミクズの死んで当然の人間だもん」


「そこまで言ってないんだけど」


「まあまあ、高橋さん俺が面倒だからちゃんと慰めてやっといて」


「はいはい」


「そんな人為的な慰めいらない!」



うわああって嘘泣きだすキノをマヒロくんはガン無視して教室を出ていった。


私だって面倒なんだけど



「ねえキノ、機嫌直してよ」


「ふーんだ、どーせタカだってこんな俺が面倒とか思ってんだろ」


「そりゃまあ、」


「ちょっとくらいオブラートに包んで!」


「キノねえ、いい?別に私はキノをいじめたいわけじゃ…、えーと、まあいじめたいわけだけど」


「もうなんなんだ!」



いやだってね、
楽しいんだもの。

仕方ない仕方ない



「キノのことうざいとかも思ってない……いやまあ、たまに思うけど」


「もう死んでいいすか」


「でもね、そこがすき

キノがすきだよ」