タカは、新しい家族が欲しくないのだろうか。


「ねえ、ぼーっとしちゃって、そんなに寂しいの?」

「いや、別に」

「…けど、家族って、いいね。やっぱり」



それは、
家族が、ほしいってこと…?

見送られる側に、なりたいということ?



「家族、欲しいの…?」

「ん?んー、まあ、ね」

「……」


そりゃ、そうだよな。

園長先生とか、大人はたくさんいるけれど、

タカには、甘えられる人がいなかったんだ。


何をやっても、どこにいても、決して切れない絆は、どうしたってこの家では作れない。


……だけど、




「…俺、タカが居なくなるのは…いやだ」

「え?」

「ずっと、ここで…一緒にいたい」



もう、彼女のいない生活なんて、できない。

俺には、タカが必要だ。

かけがえのない、存在だ。


わがままなのは、わかってる。


彼女の願いを妨げるようなことを思うなんて、自分でもひどいやつだって思う。


それでも、


タカがいないのは、


いやだ。








「ばーか、わがまま、てか、恥ずかしすぎ」


ペシッと、軽く頭を叩かれた。
タカの言葉に、少し顔をしかめた。


そうだよな。

俺がそんなこと、思っていいわけないよな。


確かに、わがまますぎた。

こんなの、ただの醜い欲望だ。



「ごめん」

「もー、私別にここから出たいとかそういう意味じゃないから。
ここには、もう私の家族がいるの。

園長先生と小さい子たちと、キノ!切っても切れない絆はないけれど、私は、ここにいる皆を誰よりも愛してるよ。

大切で、一番に守りたい。だから、私は、ここをでないよ」


ね?となんかあやされた気分になったが、
おとなしく頷いておいた。

なんか、すごく恥ずかしくなってきた。


俺も、家族なのか。


もうひとつの、家族。



「そう、だね」



この愛情は、

やっぱり、タカとは違うみたいだ。


だけど、それでもいいか。

これからも側にいれるなら、なんだって。


俺は、タカの家族だ。


俺の、特権だ。