「かわいそうでしょ!」
「俺、あんまり虫好きじゃないから…」
そういうと、タカがむーっと口を尖らした。
そんな顔されても、外遊びに慣れてない俺がカエル見て喜ぶわけないし、
楽しみかたがわからない。
「面白いんだよ!で、カエルってすごくかわいいの!よく見てみて!!」
タカが濡れた手で俺の手を掴むと草むらの手前でしゃがみこんだ。
タカに握られた手は、カエルを持っていた手だったけれど、なんだかもうどうでもよくなって、俺もしゃがみこんだ。
「ほら、ここにも、あそこにもいる」
「雨だからかな」
タカが目の前の一匹のカエルを人差し指で優しくなで始めた。
「…ね、かわいい」
「…タカってちょっとおかしいよ」
「おかしくないよ、うちのちっちゃい子達もみんな好きだよ?ほら、キノも触ってごらん?」
「いや、俺は…いいよ」
緑色でなんか気持ち悪い、それが最初の印象だった。
「キノはほんと冒険心に欠けるよね。いいから、ほら!!」
「わっ、ちょ」
無理やり手のひらに乗せられたそれに、俺は体を凍らせた。
じっとこちらを見つめる不思議な目から、俺も目を離さなかった。
「固すぎだって、ほら、撫でてあげて?」
「…いや、」
「いいから」
いつも、俺に拒否権がないんだけど。
しぶしぶ、微動だにしない手の上のカエルを人差し指でくすぐるように撫でた。
緑色の皮膚は
思ったよりもずっと
柔らかかった。
「気持ち良さそう」
「う、うん」
体を丸ませて伏せるカエル。
ぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぷにぷにぷに…
………気持ちいい………
「ね?かわいいでしょ…?」
「ま、まあ…うん…」
「へへ、ほら、好きになった」
タカの笑顔に、つられて頬が緩んだ。