「カエルは冬になると皮膚全体で呼吸するのよ」


その日は、まあ、関係あるかわからないが、雨だった。


休日はいつも小さい子達に混じって外に遊びに出掛けるタカだが、今日に限ってはそれもできないため家のなかで過ごしている。


俺もとくにやることもなく、タカに部屋に呼ばれてゲームをしている。


格闘ゲームとかいうやつ。


ちなみにいまのところ全敗。



「あー、だからそこはジャンプしながら攻撃だって。何回死んでんの」


殺してるのはお前じゃないか、とは口が裂けても言えない。
どうせ『弱すぎるから悪いんじゃん』て言い返されるのがオチだ。



「飽きたー、外いきたーい」

「雨降ってるから無理だろ」

「雨降ってるから行きたいんじゃん!よーし、ちょっとだけ行こ!傘さしてさ」


えー…心のなかでそう言うと、タカは察したようにじとっと見つめてきた。
タカはテコでも自分の意見を曲げない。

こうなったらどうしようもない。


俺とタカは小さい子達に見つからないようにこっそり家を出た。

外は大雨とはいかないけれど、結構降っていた。



「どこいくの」

「んー、近く近く」


機嫌の良さそうな声でタカは鼻唄でも歌い出しそうな雰囲気だった。

タカの少し後ろをついていくと、草むらの多い公園についた。

ここは、いつもタカが小さい子達と来る場所だ。


「なんでここ?」

「ここはね、雨の日は宝の山なのです」

「は?」

タカはそういうとそろりそろりと、草むらに入っていった。

足が濡れるのが嫌で、俺は草むらの手前で足を止めて待っていると、すぐにタカが草むらから出てきた。

右手と左手の平を重ね合わせて何かを大切に隠しているようだった。



「なにしてんの?」

「ひひ、」


いたずらっ子の笑顔が俺に向くと、その手は開かれて、中身が勢いよく飛んだ。


「うわっっ!!?な、わ、ああっ」

「驚きすぎー!あ、ちょっと!だめだめ!!」


勢いよく飛び出したそれは、雨に濡れて鮮やかな緑色の、それは、…どうみてもカエルなわけで、

地面に着地したそいつを追い払うように、土をかけようとしたらタカにとめられた。