そのあと、初めて知った。
母さんに、"恋人"が居たこと。
俺のせいで、結婚を破棄されたこと。
気づけば、母さんは警察に連行されていた。
面会にはあれから一度も行っていなかった。
あの血走った目を思い出すだけで震えが止まらなかった。
あのあと、病院で検査をして、家に戻った。
家のなかは、あの日と同じで
汚くて、ぐちゃぐちゃのままだった。
明後日に、児童養護施設というところに行くことになったらしい。
服の準備や、整理をするためにとりあえず家に一度帰ることにしたのだ。
一人でご飯を食べて、掃除をして、
やることはいつもと変わらないはずなのに、今にも倒れてしまいそうなぐらいもやもやしていた。
胸の辺りが息苦しかった。
警察の人と話をするときはまったく表情に出さずにいたけれど。
一人になると
やたら苦しくなった。
それこそ、あのとき首を絞められたときと同じぐらい、苦しかった。
夕方、気晴らしがてら外に出た。
人通りは少ないところを選んで歩いた。
じきに日没になるだろう。
夕焼けが眩しかった。
自然と、足が河川敷にかかった橋へと向かっていた。
あそこからならもっと綺麗に見えるだろうと思った。
一歩一歩、足を進めていくと川の水がキラキラ輝いてることに気づいた。
橋に足をかけて、ゆっくりと進んで中央で足を止めて夕焼けを眺めた。
寝不足のせいか、目がチカチカした。
暑い
セミの声がどこかからか聞こえていた。
飛行機が飛ぶ音が聞こえてくる。
俺は下を向いた
大きな川
きっと足がつかないだろう。
ここから落ちたら死んでしまう。
なんだか渇いた笑いがもれた。