女手一つで育てられた俺は、小さなボロいアパートで母親と二人で暮らしていた。


母さんは毎日仕事で朝帰りも多く、家事全般は俺の仕事だった。


いつもありがとう、と言ってご飯を食べてくれるお母さんは、俺の唯一無二の大切な存在だった。


母さんのためなら、なんでもしようと思った。


もともと無口に加えて貧乏というレッテルを貼られたおかげで友人がいなかった。


友人の一人もいない

惨めで、みっともない、

質素な生活でも

十分幸せだった。



だけど、




俺が中学に入ったばかりの時、それは呆気なく崩れ去った。

信じ続けていた母さんは、ある日、突然豹変した。

その日、母さんはえらく酔って帰って来た。



足取りもままならない母さんの肩を支えると、母さんは俺を押し倒して、その反動で母さんも崩れるように倒れて、バタンッバタンッと大きな音をたてたあと、俺の首を締めた。


大きくがなりたてるような声が耳にガンガンと響いた。


母さんの目は、赤く血走っていた。



母さんの唇が怒りで震えながら出した声を、俺は、今でも頭に焼き付いて離れない。




『私が幸せになれないのはあんたのせいなのよっ!!!』



俺の目の前で

信じていたものはあっさりと俺を裏切った。