友紀子ちゃんと麻美ちゃん。
仲良しの二人組はキャンプ以来普通に話せる程度の仲になった。
二人も初詣に来ていたようだ。
「他にも来てるひと居たんだね」
ひとりごとのように呟くとアザミくんは苦笑いを浮かべてこちらに向き直ると私の肩をガシッと掴んだ。
どうした、アザミくんよ。
必死なところ見るの結構珍しい気がするんだけれど。
「あの…ほら、麻美…?ちゃんだっけ。あのこに初詣誘われたんだけど、めんどくて冬たちと行くっつって断っちゃってさ…
……付いてっていいっすか?」
懇願するように肩をつかむ力も強くなった。
どうしてそんな嘘をつくのか。
可愛い女の子に初詣誘われたんだから行けばいいものを。
私だったら行くのに。
実際エリちゃんに誘われてちょっとめんどくさいけど来たのに。
「行けるなら今から麻美ちゃんと合流したら?」
「いや、だから、…えーと」
「私はアザミくんを誘ってないし。誘った子と行くのが普通じゃないの」
「んー?あー、のさ、だから、うーん。まあそうなんだけどー…、なに冬怒ってんの?」
「可愛い女の子の誘いを断るのはいけないことだと思う」
アザミくんは後頭部に手を置いて口をへの字に曲げながら私を見下ろしてくるので、私も目を離さない。
ただイケメンだから女の子が自然によってくることをめんどくさいで片付けてほしくない。
しかも、よりによって、私たちと行くという嘘をついてまで。
「うーん、まあ、はい。ちょっと言い方悪かったな。」
「なに?」
「ごめん、さっきの言い訳入ってた。ただ俺が冬と行きたかっただけ。
前から一応誘おうとしてたんだけど、…他のやつと行くなら俺いない方いいのかなと思って、あー、わけわかんねーな。」
「なにいってんの、一緒に映画見た仲じゃん。遠慮いらないでしょ。
じゃあ、行きますか一緒に」
この私の言葉の変わりよう。
私と行きたいと言ってくれたことが素直に嬉しかった。
変な意味じゃなくて、それくらい友達として距離が近いってことが。
…キノは、関係ないからな。