ぴたりと止まった真さんの声がごわんごわんと頭に妙な振動を残していった。


それは愕然というより、違和感から来ていた気がする。

あのいつも能天気なキノが
私と出会うまで、そんな暮らしをしていたことのギャップから来る違和感。


いつものほほんとしてて能天気でバカなキノがそんな過去を、ずっと引きずっていたの。


全然知らなかった。





「実は、隆也が産まれてからこっちも忙しくてお互い全然会えないし、話せなくて。

事件があったあとはすぐに行ったけど、
本当に運が悪くて俺、すぐ出張で海外行くことになってて

そっから一年海外に行ってて、隆也を迎えに行けたのはそのあと、事件から一年以上すぎたとき、隆也が中2になっとときだった。

姉さんは結構前に釈放されてたんだけどね。
一ヶ月ぐらい前にやっと環境が整ったからって隆哉を返してほしいって言われて

ほんとは、隆哉が居たから、俺の結婚もずっと延長し続けてたから

隆哉もたぶんそれを分かってて、出ていくのに何の抵抗もしなかったんだと思う」



頭を整理しながら、とにかく落ち着こうとした。

エリちゃんなんてもうすでにポロポロ泣いていて、
私は泣かなかったけれど、胸が痛かった。


色んな想いが交差していくなか、ふと、思い出す。

一番聞けるだろうと思っていた人物が
出てこなかったからだ。



「あの、いいですか?」


「うん?」


「道宮、宝さんを知ってますか?」


「宝?えーと、なんだっけ、聞いたことはあるな…えっと」


「キノの知り合いだと思います。亡くなってしまった…」


「ああ、そう、思い出した。
海外から帰って隆也を迎えにいったあと、一度だけ電話がかかってきたんだ。

俺が隆也を迎えに行くまで、隆也は児童擁護施設に預けていて、
そこにいた女の子が事故で亡くなったって。

そういえば、隆也がそのとき二日間ぐらい部屋から出てこなかったんだ。
友達だったんだろうな

だけど葬式には結局出なかったな。」


「あのっ、その子って、私に似てるんですか?」


「えっと、ごめんね、俺、電話でその話聞いただけだから」


「…そうですか」