「キノの実母は、キノが中1の時に警察に捕まったんだ」


「警察…ですか」


「理由は殺人未遂。隆也を殺しかけた」



私は息をするのを忘れた。
まばたきもせずに、非現実的な言葉を理解しようと何度も頭の中で繰り返す。


するとエリちゃんが腕にぎゅっと捕まってきた。

震えていた。

殺人未遂って…


こわ、



「俺と姉さんの両親昔離婚してさ、俺と姉さんは母親の方に付いてったんだ。けどまあ家にはほとんどいなくて

高校までおばあちゃんの家に居たんだけどそのうちおばあちゃんも亡くなってね、母さんはもうずっと帰ってこないし。

姉さんは高校中退して働きに出たんだ。金がないと暮らしていけないからって。」

「…大変だったんですね」

「いや、俺は全然。姉さんのおかげで卒業できたし。
で、知らなかったんだけど、姉さんは水商売で稼いでいたんだ。

そのときに、隆也ができちゃったらしい」



やっと繋がった。

文化祭のキノの言葉は、こういうことだったんだ。


キノは、望まれない子だったんだね。


そのときのことを思い出して俯くと、真さんが話を続け始めた。



「期間的な問題もあって姉さんは隆也を産んだんだ。
だけど、姉さんは隆也のことちゃんと世話をしたし、愛してた。

隆也も少なくともあの事件までは何の問題もなくいいこに育っていたんだよ」


「…なんで、キノを…」


「うん。まあ、あとから全部聞いたんだけど、やっぱりね、大変だったんだって。子育てして何時間も働いて、毎日疲れ果てて。

そのときに、姉さんが仕事で知り合った客と交際し始めて。その相手が金持ちだったから、姉さんは躍起になって結婚しようとしたんだ。」


「…キノのために?」


「それもあるだろうし。きつかったんだろうな。生活も。

で、いざ結婚の話になったときに、やっと隆也の話を出したんだと。

まあ、もうわかるだろうけど。

結婚はなくなったんだ。子供がいるなんてしらなかったってね」


「それで、腹いせにキノを?」


「うん。ていっても、そのときは酒めちゃくちゃ飲んでたから、正気じゃなかったんだろうけど。

それで、姉さんは捕まっちまった。隆也が中1になったばかりのときだ」