で、
どうしてくれる。
私は、振られたのだろうか。
ほどけた手のひらが冷たかった。
キノの次の言葉を待ちながら、口からふわふわと浮き上がる白いもやを目で追った。
「タカは、どうしたい」
「…え?」
キノに目を向けた。
内容の意味が分からなかった。
「これから」
「…どういうこと?」
キノがうーんと首をひねりながら、言いにくそうにぼそぼそと声を出した。
「タカは、俺と、これからどうしたい」
「は?」
まず、出た第一声がこれだった。
色々な言葉が喉まで押し寄せたけれど、まずはこれだった。
それからキノの更にこわばった顔を見ながら
眉に力が入って
先ほど喉に停滞させた言葉が溢れてきた。
「知らないよ、そんなこと」
「……」
「キノが私のこと、誰かの代わりにしていたこと、知ってるよ、わかってたよ、だけど、それでもキノが言い出すまではって思ってずっと黙っていた、
で、今日、やっとキノが話した。
私、すっげー傷ついた。でも、言ってくれてよかった。
キノもちゃんと考えていたって、確認できたから。
キノの出した答えなら仕方ないって、そう思っていたけれど、
なんで私に聞くの?
私にどうしろって言うのよ。
一緒にいてって言ったら居てくれんの?私がそんなこと言うと思う?
そんなひどいことしないよ。
私が決めれるわけないじゃん、ばか
私に聞かないでよ、
なんて言ったらいいか、わからないよ」
ついに溢れだした涙は、袖でぬぐってもぬぐっても
ダムが結界したように次から次へと押し寄せてきて
どうしようもないぐらい情けなくて
キノは困ったような顔をしたまま何も言ってくれないから
バックを一振り、キノの体にぶち当てて信号の向こう側へと走り抜けた。