「タカの、…後ろ姿がね、似てたから」


「………誰に」


「手の、形とか、目元とかも、なんとなく…」



誰に、なんて聞かなくても。分かってる。

道宮宝にだ。

キノの、大切な人にだ。

夕焼けに照らされたキノの横顔が痛々しく笑っている。
私は下唇をかんだ。


キノの想いが
やっと溢れだした。


そう思った。




「たぶん、偶然。タカを見つけたから、

だから…こうやって一緒にいるのかな」


「…知らないよ」


「だよね」



ふう、と震えた息を吐く音がやけに耳に響いた。
そのあと鼻をすすったキノはぴたりと立ち止まった。

目の前には赤信号が立っていた。


私たちの行く手を阻んでいた。




「進めない」





キノのその一言が、私の顔もっと醜く歪ませた。


泣きそうなのを必死に我慢して、キノの手が離れないようにぎゅっと握り返した。