「タカは俺に会いたくなかったの」


「………」


「熱あるの」


「あるよ」


「何度」


「さんじゅ……8度9分…くらいかな」


「嘘つき」


最近キノが鋭くなった気がする。

キノは布団から降りるとふらふらしながら私に近づいてきた。

私の目の前に立つと、
軽く頭突きするように私の額に自分の額をつけた。



「ほら。俺の方が熱い…」

ニッと笑うキノを見上げながら、眉を寄せて苦い顔をする。

悪かったな。こんな元気なのに休んで。



「私は、もともと低体温なんです」


「そうなんだー」


「信じてないでしょ」


まあ、嘘だけど。

キノはえへへと陽気に笑いながらベッドに座って、手招きした。


「二人きりだし、イチャイチャしよ」


「病人同士安静にした方がいいと思うけど?」


「堅苦しいこと言うなよお嬢さん」



そう言いながら満更でもないみたいで、キノの隣に座る私。

キノが私の手を握って、ベッドに倒すように引っ張った。

キノの額は熱いのに
キノの手のひらは冷たいんだね。




「なにしよう。ねえ」


「寝ましょ」


「俺、眠くない」


「じゃあ、ぼーっとしよ」

「なにそれ。死ぬほどつまんない」


「キノは何したいの」


「タカと遊びたい」


「病人がバカ言わないの」

「じゃあギュってして、一緒に寝よ?」



え?う、うーん。

そんな返事をしたら、肯定で受け止められて、布団が上からかけられると

隠れるように布団の中でキノの腕が私を抱き締めた。