そのときアザミくんがわって入る。



「キノ、フユが泣きそうだけど」


「お前、タカに言ったのか」


「は?何を?え?木野くん聞かれたくないやましいことなんてあったっけなぁ」

「ふざけるな!!!」



キノの怒声についにじわじわと襲っていた涙がぶわっと溢れた。

怖くなった。

私は聞いちゃいけないことを聞いたんだ。
全てじゃなくても

きっと、それが一番キノの聞かれたくなかった部分なんじゃないかとすぐ考えることが出来た。




「やめてよ、けほんっ、キノ、怒らないで」


「タカ、」


「お願い、お願いだから、…怒鳴らないで、…ふえっくし、」


「…大丈夫?」


キノが心配そうに私を見下ろした。

私は、気にせずキノが今にもアザミくんに飛びかかりそうなのをキノの背中に強く抱きついて留めさせた。

落ち着かせようと何度も落ち着いてと呟いて私は頬をキノの背中に押し付けるようにしてぎゅっと目をつぶる。


キノが自分の胸にまわった私の腕を掴んだ。



「怒って、ないから。」


引っ張られる腕。そのままその場を立ち去ることになった。

あちらこちらでテントの中の電気の光がもれていて、私は自分のテントの場所をすぐに特定できた。