なぜ今映画鑑賞の話を?

頭に疑問符が浮かぶが私は黙ったままアザミくんを見つめた。


「初めに見たやつ、俺がどうしてもあれだけは見れないって言った、あれ」


「それがどうしたの?」


アザミくんは後頭部に手でさすりながら、あれさー、と言う。

今さら感想を?

まさか。

アザミくんは確かあのとき
泣いていた。





「あれ、似てるんだ。少し
話が」


「似てる?」


「タカラと、それから不幸なことに、フユはあのヒロインと同じなんだよ」


「…え、ごほっ、けほ」


「正直、フユのためっていったけど俺自身あまり話したくないから、

とりあえずまた考えなよ。気持ちに整理ついてそれでもまだ知りたいなら詳しく教えてやる。

せっかくのキャンプなんだから暗くなんなよ、あと咳がまじな風邪だぞ」


私は、口を手で押さえた。
なんだか疲れたからか朝よりひどい気がする。

アザミくんは私の頭をポンポンと軽く叩いてくれた。

真っ暗な足元に目をやってうつむきながら私は身体中固まったままだった。


思った以上に衝撃は強かった。


泣きたい気持ちより

アザミくんが言うように整理が必要だ。


あの映画に似ているということはそれは、つまり、


そういうこと。