そう、とだけ言って私は目をそらした。

まだたった一言しか言われていない
だけど、それで大体分かってしまった。


道宮タカラ


私をタカって呼ぶのは、その人に影響を受けているんだろう。

だからはじめからわたしのことをタカって呼んだ。

そうだったんだ。




「…まだ、聞く?」


「…まだ、全然聞いてないじゃん」


「そう言われてもなぁ」



アザミくんの手が

優しく私の頬に触れた。
ヒヤリと冷たい手は、私の頬を撫でながら肩に降りていった。


そのとき

自分の肩が震えてることに気がついた。



「大丈夫って顔してないから」


「…平気、続きを、…げほ、」


「わかった、けど、もう大体わかるだろ。
詳しい話はやめとく、そうだ

この前映画鑑賞したじゃん?」