「私は、変わらないよ。なに聞いても、傷ついたとしても、キノが側にいてくれるだけでいいから」
「その健気な気持ちを踏みにじることやってんだよ、あいつは」
「いいよ、私は大丈夫」
アザミくんが今までのと比べ物にならないため息をはいたあと
目を細めながら私を見つめたあと、また、ため息をついて。
それからやっと私の手を指差した。
「その髪どめ」
「うん」
「それ、もとはある女の子のだった」
私は手を開いて髪どめを見つめた。
ここまでは予想していた。
この蝶々の髪どめには私以外の女の子の持ち主がいること。
それをなぜアザミくんが持っているのかはわからないけれど。
顔をあげると
アザミくんの真剣な目とあって、ドキンと心臓が響いた。
真っ暗な林が私たちを飲み込んでしまう気がした。
それほどアザミくんの目は、暗く、悲しそうな、だけど真剣な目で
私はこれを聞いたら
私は変わるのだろうか。
どう変わると言うのだろう。
林の暗闇が心まで侵食しそうな勢いで襲ってくる。
どくんどくんとなる鼓動
逃げているような、待ち構えるような感情が今になって交錯するが
もう
戻ることはできない。