バカップルも悪くない。
こうやっていちゃこらしてる時間も恥ずかしいしバカらしいけど
それでも好き。
キノに触れられることが嬉しい。
そんなことを、今さら実感した。
「タカの部屋は相変わらずさっぱりしてます、と」
「…悪い」
「いや?俺があげたもの以外にあまり目に入んないからいいよ」
「キノ以外からもらったものだってあるよ」
「え、うそ、なに」
ていっても、
例の髪どめなわけだが。
あまり深く考えず、私は髪どめをキノに見せた。
キノは髪どめを電気に透かしてみたりして目を細めた。
「タカ、着けて」
「いいけど」
前髪を真ん中でわけて、右耳の近くでぱちっと留める。
キノはじーっと私をみつめたあと、柔らかく微笑んだ。
「やっぱ、似合う」
「そう?」
「うん」
「これアザミくんからもらったやつだけど、いいの」
「タカが可愛くなったからいい」
「わけわかんないし」
アザミくんに私に触るなって言っておきながら、アザミくんにもらったものは気にしないんだ。
そこんとこどうなのよ、ええ?
基準なんなの。
喉の奥に言葉を押し込めて、私は髪どめをもとの場所に戻した。
相変わらずこっちの気も知らずごろんごろんしてるキノ。
一体キノはなんなのだろう。
ほんとに私のこと好きなわけ。
はあ、
キノが未だにどんな神経で喋ったり動いたりしてるのかわからない。
エリちゃんぐらい分かりやすければいいのに。
そのまま二人でゴロゴロして、いつの間にか私は眠っていて
次に起きたとき、キノはもういなかった。
そのとき襲ってきた孤独感はまた格別にひどくて
週があければすぐにでも会えるのに寂しかった。
はぁ
深夜の自室、真っ暗な中で私のため息がもれた。
キノと居れば居るほど離れがたくなる。
前はもっと楽だったのに。
なるほど、これが恋だ。
まったく、私はいつからこんなにもキノが好きになったんだ。
「ぶぅえっくし」
ズルズル
鼻をすすり、一度身震いをして再び布団にもぞもぞと潜り込んだ。
さて
キャンプはすぐそこだ。