「そんな目で見られても、俺だってしたいけど、とりあえず今は帰って早く風呂に入るなりしないとさ」


なんでこんなときばっかり正論言うのよ腹立つ。

私は口を尖らしながら両手を広げておんぶを強要したら
キノは素直に私を背負って歩き出した。

密着したキノの背中だけがすごくあったかくて
私は頬をキノの肩にくっつけて目をつぶった。


なんだか

お父さんにおぶってもらってる気分。


ゆっくりゆっくり気を使いながら踏み出しているのがなんとなく伝わって、
私は口を緩めながらキノに寄り添った。


家につくと、キノが玄関でお母さんを呼んだ。


お母さんは目を丸くして私とキノを交互に見た。


キノは私のお母さんに心配させないようにふらふらしてたら側溝に落ちたと言った。

側溝に落ちただけで全身水浸しになるわけないのに


お母さんの反応は"あらー、ちゃんと歩きなさいよー"だった。


お母さんが鈍くてよかった。

キノに風呂を貸して私もすぐあとに風呂に入ってあがると、なぜかキノは食卓にいて、うちのお茶碗を片手に味噌汁をすすっていた。