「確かに、悲しかったけれど」


「あの映画だけは無理なんだよな。最後まで見れん」

「そこまで?」


「うん」



こくりと妙に素直に頷くアザミくん。
なんか全然泣かなかった私がいたたまれない。

もう少しエリちゃんみたいにうるっと泣けたらいいのに。

私も感動したにはしたんだが、心臓あたりでじーんて来ただけで目まで押し寄せてこなかった。


まさかアザミくんも実は純粋系男子なの



「フユ」



アザミくんの声が階段に響くとアザミくんが立ち上がって降りてきた。

とん、と肩に手を置かれると

じっと見つめられ硬直した。

な、なんだろう。





「フユがもっと嫌なやつだったら良かったのにな」


「………は?」


「行くか、待ってるだろ」

「あ、うん」



アザミくんが先に背中を見せ、私はそれを追いかけた。

いったい今のはどういう意味なんだろう。

毎回なんか含んだ物言いでなにいってんのかわかんないこと多いし。


アザミくんもよくわからない。


あの映画でしか泣かないのも変な話だ。

もっと似たような感動する話もあるだろうに。

いやまあいい話ではあったけど。



「フーちゃーん!2個目始まっちゃうよ!」