そんなことひとかけらも考えないまま

キャンプは楽しくなるだろうと勝手な予想をたて、午後の授業終了後に帰宅する。


いつものように大輝ちゃんが迎えてくれて、抱っこしてそのまま部屋に行った。

ベッドに腰掛け息をはく。
今日もなんだか疲れた。


壁にかけられた鏡に顔を向けてみると自分のどんよりした顔が容赦なく映し出される。

顔色わるっ

笑顔を作ってみる。


ダメだ。ふだんそんなばか笑いしないから頬の筋肉が衰えて薄笑いしかできない。


どうやったらエリちゃんみたいな天使の笑顔が作れるのか。


いや、あれはエリちゃんにしかできないことだ。


面白いことがあったら笑えるには笑える。

ただ作り笑いが苦手なだけだ。


だから演技も下手なんだろう。



ふと鏡にうつる髪どめに目が行く。

じっくり見てなかったけど、これ蝶々の形していたのか。


髪からとって手のひらにのせて色んな角度から眺めてみる。

黒い蝶々形の髪どめ。

可愛い、けど。


なんかちょっと裏の金属部分が錆びてきてるし

表面の黒色もよく見ると少しはげてる。

もともと黒に塗ってる黒だからはげても黒でめだたないけど。