「タカっ!!」
「あ、キノ」
振り向くと息を荒くしたキノがいた。
「どしたの」
「どしたのじゃないだろ、廊下から外見たら
タカが知らない男につけられてたから
まさか、タカを体育館倉庫に連れ込んであんなことやこんなことされるんじゃないかって
俺心配で、」
「想像力がとても豊かですね」
秋だからですか?
キノの想像力は秋の実りとともに豊かになるんですか?
心配しすぎでしょ。
「学校の道教えただけだよ。用があるからってさ」
「ほんと?」
「ほんとーです」
相変わらず疑い深いキノ。
私はまだ信じるに値しないのだろうか。
「心配するから早く学校来てよ」
人目も気にせず職員室の前でギュムッと抱き締められ慌ててキノの背中をたたいてやめさせる。
「そういうのは、2人のときにして」
「…んー」
返事の代わりに唇を尖らせて反抗ぎみに唸る。
ただでさえ文化祭のせいでのろけバカップルのレッテルを張られそうになってるんだ。
私はのろけどもバカでもないから誤解されたくない…!
「……タカ、」
「今度はな……に、」
急に顔を近づけるキノに
私はびっくりして固まる。
すると
キノが私の髪に触れた。
「これ、どこで、」
「これって、ああ、なんか、さっきの人につけられて」
「……さっきの、」
「職員室連れてった、」
するとキノは私から離れると職員室に無言で入り込んだ。
なに、いきなり
どうしたの
「キノ…?」
「いない」
「あれ、もう出てったのかな」
「………」
キノが黙りこみ
私は難しい顔をするキノを見上げた。
キノの行動は理解不能、だ、けど
今回のはいったい
どういうこと?
「キノ、どうしたの?」
「……いや、なーんも」
「髪止め、気になるの、取ろうか?」
「ううん。可愛いからつけといていいよ」
「…そう」
取ろうと髪止めに伸ばした手をおろすと
キノが私の腕を掴んだ。
キノの目に
私が映った。
「タカは、俺のだから」
「……私ものじゃねーし」
「俺の、大事な人だから」
いい感じに付け足すな。
そういうのが
一番弱い。