「…真さんとか、お父さんと、お母さん
いるんじゃないの」
「違う、俺は
俺は、愛すことができる家族がほしい
タカと、その子供を愛したい」
「キノは、キノの家族を、愛してないの」
キノが沈黙したあと
溜めた言葉を吐き捨てた。
「愛してくれない家族を
愛すことなんて出来ない」
キノの口から
初めて家族の話を聞いた。
言葉の端々から
キノが家族に愛されなかったこと
キノは"家族"を愛したいことが読み取れた。
キノの腕の力が弱まって
急にキノが弱々しく見えた。
言葉はなくても
きっと私の知らない昔のキノは孤独の中に生きていたんだろうと思った。
見たことのない小さなキノを思って
少し
悲しくなった。
私はまだ
キノの家族の事情も
キノの過去も知らないけれど
今は
キノにとって
幸せなのだろうか。
そうだといいな。
布団から腕を出して
キノを胸元で抱き締めた。
キノは静かにおでこをくっつけて目をつぶっていた。
子供のような寝顔。
仕草。
守ってあげたいと思った。
「好きだよ、愛してる」
小さな声で口にした言葉は
信じられないぐらい普通に言えた。