「キノ、嫌い、ばか、ごみくず」
「え!!?あ、ちょっと、」
「速さいらないし、急がないといけないけど、まだ時間あるし
キノはいつも腕を引っ張るけど
地味に痛いし」
「………あー…」
キノは笑いを堪えるように手の甲を口に当てた。
うわっ
なんか腹立つ。
笑うなよばか。
「これでいい?」
優しく握られた手。
うん
これでいい。
軽く頷くと
キノが歩き出す。
私もキノについていった。
「素直に手を繋ぎたいって言ったらいいじゃん」
「うっさいばか」
「うん、うん、可愛い可愛い」
「むかつくんだけど」
「俺のこと愛してるくせに」
「〜……っっ」
「今日さー、劇終わったら文化祭一緒にまわろ」
あーもう
すぐ調子に乗ったり話変わったり。
隣でへらへらと笑うキノ。
一見何も考えていないようで
色んなことに悩んでいた。
私は間違っていた。
やっぱりキノのこと
知らないことだらけだ。
「うん、まわろ」
「約束」
「はい、約束」
手のひらを更に強く握った。