「タカは、相変わらず、クールだよな」


「え?」


キノが自嘲気味に笑った。

「それとも、あれかな。俺が重いだけ?」


「な、なに?」


「だって、タカはいつも俺のこと放っておくじゃん。
昨日は一言も話さなかったし

俺が突っ走ってっても追ってこないし、これは俺が悪いんだけど」


だんだん拗ねた口調になるキノに私は眉を寄せる。

私、そんな薄情に感じられていたの?

確かに昨日は話せなかった。

だけどそれは

キノがなんか、色んな人に囲まれてて
いつの間にか人気者になっちゃってたから…

急に女子に人気になってさぞ嬉しかろうに。

そんな皮肉めいたことを思っていたな。


「タカは、俺のこと、割りとどうでもいいの?

なんとなく今まで一緒にいたの?

めんどくさいやつって思われてる?」


キノが息継ぎをした。


私はその瞬間実感する

どれだけ思われているか


私の気持ちの何分の1も

伝わってはいなかったのか。


重いなんて思ったこと一度もない。
まして割りとどうでもいいなんて、そんなわけない。
めんどくさいとは、そりゃ一緒にいたら少しは思うけど。

それ以上に

私は


「俺はもっと、

タカの本音が聞きたい」




ごめんね


いっぱい不安にさせて。



いつもキノにだけ伝えさせてごめん

ちゃんと言えなくてごめん


私には
勇気がなかった。



だからごまかしてきたけれど


本当はずっと


ずっと


言いたかった。


キノの目を見て

しっかりと

自分の気持ちを。



キノに初めて告白されて以来ずっと


キノにばかり言わせてしまったね。



私はうつむいて、息を吐いた。


ため息じゃない、心を落ち着けるために。


やっぱり

緊張してしまう。




顔をあげるとキノの不満げな顔が目にはいる。


私が気持ちを告げたら

キノは


また笑ってくれる?



私は一歩を踏み出した。



キノに向かって

走り出した。



2秒もかからない。



私はキノにたどり着く。

ブレーキを踏む暇なんてない。


その代わりキノにぶつかるけど
それでいい。


伝わればいい。


ぶつかった体がよろめいて、キノがとっさに私を支えようと腕を伸ばした。


キノの顔が
すぐ隣に見えた。


私はキノの頬に両手を添えた。

キノは目を見開いた。


私は



キノの唇に

キスをした。