「なんで、姉役やめたの」
「代わってって、頼まれたから、仕方なく」
そう告げると
キノの表情が歪んだ。
やばい、地雷か?
舞台は屋上。
少年Bが学校の屋上より飛び降り自殺。
現場には少女Aがいたが少女Aは容疑を否認している…
このシナリオだけは避けなければならない…
ここから落ちたらドボンもバシャンッもなしにガッとなって即死だ。
ここはあの日の河原じゃない。
キノが口を開いた。
「タカ、あんなに頑張ってたじゃん。なのに、なんで簡単にやめんだよ
俺は、タカがいたから、あんなバカみたいな王子役引き受けたんだ。
タカが頑張ってるから、俺も頑張ったんだ。
タカがやらないなら、俺だってやりたくない」
キノは眉を寄せながらそう言った。
私はキノから目を離さなかった。
キノは
そんなことを思っていたのか。
あのときはどうしても断ることができる状況じゃなかった。
それを説明すればわかってくれるだろうか。
私は結んだ口を再び開く。
「ごめん、キノに何も言わなかったの悪かったって思ってる
だけど、その方皆のためになるの。
私は下手だし、キノみたいに上手くできないから
代わってもらったの。
キノは上手いよ、皆が誉めてるし、出てほしいって思われてる。
私が居なくても
キノは出てほしいよ」
まっすぐにキノを見つめて言葉を紡ぐ。
キノは目を伏せると
足元に目をやりながら呟いた。
屋上の地面に
キノの影が伸び始めていた。