学校の校門には昨日までなかった花のアーチが

廊下にはアニメのキャラのオブジェが

窓にはステンドグラス風に透明な色のついた紙が貼られている。

登る階段の手すりには出し物の広告がびっしり。

裏庭には無数の風船を連ねて出来たハートが風に揺られている。


その近くで焼きそば屋やたこ焼き屋のテントが立っており
手作りの看板が立て掛けられていた。


どこを見ても人、人、人



文化祭が

もうすぐ始まる。



「あっ、フーちゃん!!」

とりあえず教室に行こうと走るが向こうからエリちゃんが人を縫うように向かってきた。


「ごめんなさい、昨日、返事すぐ出来なくて」


「いいよそれは、それよりキノくん知らない?」


「学校来てないの?」


「ううん、けど、教室には来てないし
皆で手分けして学校中探しても見つかんないけど

キノくんの家に電話かけたらキノくんは学校行ったっていうし!!」



やけになっているエリちゃんは今にも叫びそうなくらい焦ってる。


キノが一人居ないだけで

成り立たないんだ
うちのクラスの劇は。


今まで頑張ってきたことが
すべてパアになるかもしれない。



「学校での目撃情報はあるから学校に来てることは確かなの

だけどどこにも居なくて」

「わかった、私も探す。

電話かけてみるね」


「うん、見つかったら連絡よろしくね」



深く頷いてエリちゃんの後ろ姿を見送る。

やばいな


今は9時半か。


劇は11時から講堂で行われる。


それまでになんとしても

キノを見つけなければならない。


だけどクラス全員で探しても
キノはいっこうに見つからない。


皆が探す場所には居ないということ。


皆が探していない場所



……ああ


一つ

思い浮かぶ場所があった。


たった1日

文化祭の今日だけ


休憩所として
開かれる場所がある。


だけどその場所は文化祭が始まらないと立ち入ることはできない。


だけど恐らく


そこの鍵は

もう開いている。



誰も来ない

安全な場所。





…屋上だ。