「…てか、石鹸のせいなんじゃなかったの?」


「そ、そうなのよ!お風呂掃除してて固形石鹸が急になくなって、大輝ちゃんなんか苦しそうだったから…」


「ねえ、その手にあるのはなに?」


「え?………これは……石鹸ね」


「…………」


「ふふ」


「"ふふ"じゃないよー…心配して帰ってきたのに」


「まあ、よかったじゃなぁい。なにごともなくて
あ、冬、お芋さん茹でたのよ〜食べる?」


「話をそらすな」



また深くため息。

にゃあ、と可愛らしく鳴く大輝ちゃんの額を軽くデコピンする。


まったく

ほんとどっか抜けてんだからお母さんは。



「冬、冬っ、バッタどうにかしなさいよー」


「は?ぜっっったい嫌、死んだほうまし」


「私も嫌よー、とりあえずスプレーかけとく?」



何か殺虫的なスプレーかと思いきや
お母さんはトイレから良い香りになる方のスプレーを持ってきてバッタから距離をとったままシュー、と噴射する。


風呂場が良い香り包まれる。


てか、直射じゃなきゃ意味ないでしょ。

スプレー違うし。



「うーん、元気ねぇ」


「直射したら」


「近づきたくなーい」