「マヒロくん、私傘あるからこれで帰ったら」
「いや、いいよ。ここまで来たらたこ焼き食うまで帰りたくない」
マヒロくんがキノ化した。
マヒロくんはずっとキノに付き合ってきたんだよね。
なのにこんなにも性格って違うもんなのかな。
キノと違って責任感あるし
キノと違って頭いいし
イケメンだし
ただけっこう遊び人と聞いたこともあるけど
きっと女の子から言い寄って拒まないだけだろう。
たぶん、優しいんだ。
「ほぁああ!!」
「なに!?キノ、さっきからテンション高過ぎ…ってなんで雨の中に!?」
キノの方を振り替えると
キノは雨の中でしゃがみこんでいた。
ほんと奇想天外な人だ。
私は傘をさしてキノのところに駆け寄ってキノに傘に入れつつキノの手元を見ると
なんだか毛むくじゃらなものが目に入った。
「こ、子猫?」
「ぐぅうわぁあかわいいいぃい」
キノは子猫を手のひらに載せると細長い指でつんつんと突っついた。
子猫はされるがままによたよたとキノの手のひらで転げ回ってる。
「…かわいい」
確かにこりゃかわいい
子猫なんて久しぶりに見たけど
こんな真っ白でちっちゃいの初めてかも。
なんか怯えて震えてる気もするけど
「…俺、こいつ家に連れてく」
「は?」
たこ焼きどうなんだよ
という前にまだ雨の強く降るなかキノは一人子猫を抱いて駆け出していった。
呆然と見送ってマヒロくんに目を向けると
マヒロくんの目がかなり淀んでいた。
ああ、きっと今までこんなことがあったんだなとなんとなく察して同情した。
「えーと、……たこ焼き、食べに行きますか?」
「…………あいつ……」
「マヒロくん、私が奢るから機嫌直してさ」
「いいって、ほんと勝手だなあいつは」
「まあキノだし」
通り雨だったようで
雨は数分で止んだ。
結局言い出した本人抜きでたこ焼きを食べにいくことにしたけど
マヒロくんは依然として機嫌が悪い。